筆者は、現在デンマーク在住8年で、上から15歳と13歳の男の子、そして7歳の女の子のママです。
上の子たちが年少の頃まで日本で生活し、その後デンマークに移住して、娘を出産し、現在に至っています。
そこで、今日は日本とデンマークの両方で、子育てした経験から、両国の子育ての違いについて、ご紹介したいと思います。
日本とデンマークで子育てに違いがある?
まず、はじめにお伝えしたいのは、決してどちらの国の方が良いというつもりはない、ということです。社会的環境や、ライフスタイルの違いがあるため、一概に比べられないということもありますが、どちらの国にも、それぞれ良さがあり、それと同時に問題点もまた存在すると思うからです。
父親の家事育児の負担が違う
その上で、最大の違いとして、私が挙げるのは、父親の家事育児の負担の割合でしょうか。
日本の状況は皆さんもよくご存知でしょうが、我が家も日本にいる時は、平日の夫の帰宅は、夜遅く、子供との時間はほぼ週末に限定されていた感じでした。
時間的にも、夫が家事や育児に参加することには限界がありましたし、専業主婦だった私が、家のことは、ほぼすべて担っていました。
デンマークをはじめ、北欧諸国では、高税率国家であることもあって、共働き家庭が大半を占めます。(そうでないと、経済的に厳しくなる家庭がほとんどなので、必然的に共働きとなるのです。)
そして、デンマークの場合、夫婦2人で、子供の送迎を送りと迎えを分担するのが一般的で、一方が朝送ったら、帰りはもう一方が、夕方3時半から4時頃には、お迎えをします。
片方が早朝出勤し、朝ゆっくり出る方が子供を送ったら、お迎えは早朝出勤した方が、退社時間も早くなるので、結果、早い時間にお迎えすることが可能となります。
家での習慣が違う
こういった夫婦のチームワークのおかげで、平日も子供との時間をより多く持つことができるのですが、デンマークでは、早くお迎えに行くことで、夕飯も早めに済ませ、幼児期であれば、夜7時半から遅くとも8時くらいには子供を寝かしつけるのが普通です。
学童期に入っても、低中学年くらいまでは、夜21時ごろまでには寝かせて、その後は夫婦2人の時間や、家で仕事をしたりといった大人だけの時間を持ちます。
この時間があることで、時間的にも精神的にも余裕が生まれ、仕事に家事・育児にとフル回転するデンマークの親たちを支えているのだと思います。
更に、デンマークには、日本のように学習塾のようなものもないため、宿題など家庭学習は親が見ます。また、小学校低学年くらいまでの間は、親が送迎するのが当たり前で、ランチも給食はあまり一般的ではなく、基本的に子どもたちはお弁当を持参します。(最近では、校内にカフェテリアができて、希望者はランチを購入できる学校も増えてきています)
そして、子供の友達が家に遊びに来たら、夕飯までもてなすことが珍しくありません。そして、よほど家が近所でない限り、子供はひとりで帰宅することはなく、親が迎えに来ます。
子どもの成長による違い
このように、子供が小さい頃の親の負担は、様々な面で、デンマークの方が多いように思います。
しかし、幼少期には時間も労力もかけて育てますが、いざ子供が成人すると、親はすっと手を引くのもまた、デンマークのスタイルです。
デンマークでは、18歳で成人となりますが、大学進学を機に実家を出て、一人暮らしをしたり、友人や恋人とルームシェアをしはじめるのが一般的です。
国から学生向けの補助金も支給されるため、経済的にも、あとはアルバイトなどで補えば、なんとか一人暮らしも可能になります。
赤ちゃんと添い寝しない!?
少し余談になりますが、デンマークでは、生まれた時から、赤ちゃんと添い寝することはありません。赤ちゃんには自分のベッドに寝かせて、場合によっては、自分の部屋で、ひとりで寝かせます。そして、どんなに夜泣きしても、親はあやしに行ったり、自分のベッドに連れてきたりすることはなく、赤ちゃんが泣かなくなるのをひたすら待ちます。
赤ちゃんも、泣いてもどうにもならないことを悟るのか、次第に泣かなくなるそうです。
親と子が常に一緒なわけではなく、親にも個人の時間やスペースがある、ということ、ある意味、「境界線」があることを子供は自然と理解します。
個人を尊重するのがデンマーク
このように、デンマークでは、親子と言えども、個人主義が尊重されます。
例えば、離婚するときも、子供がいるからと躊躇することはあまりありません。夫婦間の愛情がなくなれば、潔く別れます。
ただ、離婚しても、両親の家に1週間ずつ交互に滞在するので、日本のように一方の親と離れ離れになるということはないのですが、日本人の私にとっては、デンマーク人の潔いまでの個人主義には、驚かされることもあります。
養子制度が浸透してます
デンマークでは、中国などから養子を迎える人も少なくなく、養子制度が社会にすっかり浸透しています。当人も養子であることも非常にオープンにしていて、隠したり、実子でないことを後ろめたく思うこともなく、周りも同情したり、特別視することはありません。
また、離婚の話に戻りますが、別れても、ほとんどの元夫婦は、子供の誕生日などには、一緒に誕生会を開いてお祝いしたり、更に、その場にお互いの新しいパートナーや連れ子たちも同席することもごく普通なことです。
そして、同性カップルが子供を持つことも珍しくなく、現に筆者の娘の同級生の親御さんにも女性同士のカップルがいますが、そのことを娘も含め、周りも特別視することは全くなく、同性婚や同性カップルは完全に市民権を得ています。
まとめ
そんな感じで、日本の育児環境とはずいぶん違っていて、驚いたり、時には戸惑うこともありますが、大体のことは、デンマーク人のおおらかさにならって、「こういうやり方もあるんだな」と受け入れられるようになりました。
最後に、繰り返しますが、日本とデンマークの子育てが違うのは間違いありませんが、どちらの方が良いということはないと思っています。
社会のあり方やライフスタイルなど、自分だけでは、なかなか変えられないこともありますし、ないものを嘆くのではなくて、今いる状況の中で、どのようにやっていけばいいのかを考えた方が現実的かつ建設的であると筆者は考えます。
きっと、どこの社会にも、そこに合った環境というものがあるのだと思います。そして、今回の記事を読んだことによって、与えられた環境の中で、読者の皆さんが、子育てを建設的に考えられるきっかけになれば、幸いです。