実施施設が拡大する前に!「新型出生前診断」について知っておきたい5つのこと

2013年に日本に導入された新型出生前診断(NIPT)。現在は全国92カ所の施設でしか受けられませんが、今後、検査施設の条件が緩和され、開業医でも可能になるというという案を日本産科婦人科学会が了承しました。
実施施設が拡大する前に、もう一度「新型出生前診断とは何か」ということについて知っておきたいものです。
今回は、「新型出生前診断」について、出生前診断も含めてご説明します。
妊婦

そもそも「出生前診断」とは?

出産にはいろいろなリスクがあります。
特に、胎児に先天性や遺伝性の病気がないか、染色体異常などがないかなどを調べる検査を「出生前診断」といいます。

通常の妊婦健診では超音波(エコー)検査などをして、胎児の心拍や羊水量などをはじめ、成長に異常がないかどうかをチェックしますね。
その健診で異常が疑われた場合や、夫婦のどちらかが遺伝的な病気を抱えている場合、胎児が病気にかかる可能性がある場合などに「出生前診断」をします。

主な種類

羊水検査

妊婦さんのお腹に針を刺し、採取した羊水から染色体や遺伝子の異常がないか調べます。

絨毛検査

妊婦さんのお腹に針を刺すか、子宮頸部にカテーテルを挿入して胎盤から絨毛を採取し、染色体や遺伝子に異常がないかを調べます。

胎児スクリーニング検査

妊婦健診で行う超音波検査とは別の検査をします。
妊娠初期は胎児の染色体異常、妊娠中期は胎児の体や臓器の体の異常をチェックします。

母体血清マーカーテスト

母親の血液からホルモンの濃度を調べ、胎児の染色体異常がないか検査します。

母体血胎児染色体検査(NIPT)

胎児スクリーニング検査や母体血清マーカーテストで胎児の染色体の数に異常がある可能性がある場合、受けられます。

羊水検査と絨毛検査は母体と胎児にわずかのリスクがあること、その他の3つは確定診断ではないことから、受けるかは慎重に検討する必要があります。

「新型出生前診断」は何が違うの?

妊婦
新型出生前診断というのは、出生前診断の一つです、正式には「母体血胎児染色体検査(NIPT)」という名称です。
これは2011年にアメリカで新しく始まった検査法で、日本では2013年から導入されました。
従来のいわゆる「出生前診断」に比べると、リスクも低く、精度が高いとされています。
母体の血液中の遺伝子を解析すると、「パトー症候群(13トリソミー)」「エドワーズ症候群(18トリソミー)」「ダウン症(21トリソミー)」の可能性を高い確率で見つけられると言われています。

「新型出生前診断」のメリットとは?

新型出生前診断をするメリットは大きく言うと3つあります。

検査法が簡単

出生前診断の中には妊婦さんの体に負担がかかったり、流産のリスクがあったりするものもありますが、通常の採血検査と同じように血液を摂るだけなので簡単です。

検査の精度が高い

確定診断をする必要はありますが、新型出生前診断の場合、結果が「陰性」であれば、99%の確率で染色体異常ではないと考えられています。
一方、「陽性」と判定が出た場合、実際に異常がある確率も高くなっています。

早めの対処ができる

新型に限ったことではありませんが、先天性の病気や染色体異常の可能性が高いとわかっていれば、心の準備をしておけたり、障害について学んだりもできます。
また、胎内治療ができる場合もあるので、小児科チームと連携することも可能です。

「新型出生前診断」の問題点とは?

出生前診断をした結果、人工妊娠中絶をする人が増えるのではないかと危惧する声が多くあり、倫理的な観点から問題視する声もたくさんあります。
出生前診断を受けることで、メリットにあげたような心の準備ができる場合もあれば、逆に、心配のタネを増やす可能性もあります。
もし、胎児の異常がわかった場合、どのような行動をとるのかなどはしっかりと事前に考えておき、そのうえで検査を受けるか検討する必要がありそうです。

検査を受けられる時期と場所は?

時期

新型出生前診断を受けられる時期は妊娠10週以降と、日本産科婦人科学会のガイドラインには書かれています。
診断を受けてから約2週間たたないと結果が出ないので、受けたいと思っている場合は、早めに担当医に相談しておくとよいでしょう。

どこで受けられる?

新型出生前診断ができるのは妊婦に十分なカウンセリングが行える環境があり、産婦人科医と小児科医が常勤、しかも、その医師のどちらかが遺伝の専門医を有していることが条件でした。
現在、この要件を見たいしているのは日本に92施設あります。
しかし、無許可で検査をしている病院が乱立していたため、2019年3月に日本産科婦人科学会が検査可能施設の条件を緩和する方針を打ち出しました。

それによると、今までの92施設が「基幹施設」と定められ、新たに「連携施設」が設置されることになります。
遺伝の専門家でない産科医でも研修を受ければ実施ができるようになります。
もしこれが正式に決まれば、全国で100カ所ほど増えるとみられています。

費用

自由診療で保険が適用されないため、費用は全額自己負担になります。
検査を受ける場所によって違いますが、およそ20万円前後です。

まとめ

出生前の検査については様々な意見があります。
今回の条件緩和についても、反対意見があったり、日本ダウン症協会が声明を出したりもしています。
まず、受けるか受けないかを判断するためには、検査に関する情報収集を十分に行い、家族でよく話し合いをしましょう。

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