妊娠や出産の際、周囲の人から「赤ちゃんは母乳で育てないとダメ」と言われたことがある人は少なくないでしょう。たしかに母乳によるメリットはあります。けれど、それが絶対というのはもう昔の話。母乳育児でもミルク育児でも、ママが楽しく授乳できることが大切なのです。
今回は母乳育児とミルク育児それぞれのメリットをご紹介します。
母乳じゃないと丈夫に育たない?
「おはママ」の掲示板に投稿されたこのタイトルに、多くの人が注目しました。
これに対し、100件以上のレスポンスがつくなど、多くの先輩ママが反応しています。
・海外の研究結果ですが、産まれて数日のうちにミルクを飲ませた方が、飲ませなかった子に比べて、牛乳アレルギーが少ないそうです。日本産婦人科連盟も、同意してたと思いますよ。
・そんな事はない。ウチの子供は母乳だったけど風邪はしょっちゅう引くし身体弱いよ。
・全然そんな事ないと思います。うちの子は混合で育てましたが、二人とも幼稚園も小学校もほぼ皆勤賞です。
・初乳というものがあり、最初の母乳には母親の免疫成分が含まれています。おそらくそれを勘違いしているのではないかなと思います。
・母乳が出れば母乳でいいと思いますが、母親の身体的負担も多いので、無理せずミルクもうまく取り入れて全然良いと思います。もちろん完ミも、全然ありだと思います。
・完母派で、ミルクを否定するのは「私は頑張ったのに楽してズルイ」的な気持ちも少し混じったりしてるので気にしなくて良いかも。
・医学的答えはわかりません!「よそはよそ、うちはうち!」という考えで周りに何を言われても気にしない。
気にかけるべきは他人ではなく、是非我が子に!
・保育園を経営しておりました。結論から申し上げると、まったく関係ありません。
・私も母乳の出が悪くて悩んだ時期がありました。誰にも言えなくてネット検索して不安を解消してくれる言葉を探し回ってました。今子どもは10ヶ月になり、母乳かミルクかで悩む事はなくなりました。周りや自分の意識が母乳とミルク論争から、発達の程度や離乳食の進捗状況に移り変わったからかなと思ってます。もう少しすれば悩まなくて済む時が必ず来ます。気になさらず頑張ってください。
いろいろな意見があるということで、関心の高さが伺えます。
きっとみなさん、一度は「母乳で育てないと」という言葉を聞いたことがあるのかもしれません。
では、次から母乳とミルク、それぞれの検証をしていきましょう。
新生児には母乳が必要なの?
出産後、10日〜2週間くらいまでに出るどろっとしたいっぱいを「初乳」といいます。
初乳にはタンパク質やミネラルなどの栄養や、菌から赤ちゃんを守る免疫成分が含まれているのです。
初乳の出方には個人差がありますが、少しでも舐めさせたり、吸わせたり、しぼったりしてあげると効果は期待できるそうです。
出にくいことを心配しすぎてしまうと、よけいに量が減ることもあるので神経質にならず、助産師さんや看護師さんに相談しながらミルクを足すといいでしょう。
初乳の時期が終わってから、母乳育児はママの子宮の戻りを促してくれるメリットがある一方、赤ちゃんに横断が出たり、ビタミンKが不足したりということもあります。日本のミルクは世界一の品質とも言われているので、安心してミルクを上手に取り入れましょう。
授乳の種類とは?
離乳食に移行する前の赤ちゃんが育つためには「授乳」が必要です。
授乳には主に3種類あります。
完全母乳育児(完母)
ママの母乳のみで育児をする
ミルク育児(完ミ)
赤ちゃん用の粉ミルクや液体ミルクだけをあげる
混合育児
ママの母乳、粉ミルクを併用する
厚労省の調査によると、現在、母乳のみで育てているというママは全体の35〜40%程度と言われています。
ミルクのみ、混合もそれぞれ3割程度なので、体調やライフスタイルに合わせた授乳方法が良さそうです。
母乳育児のメリットとは?
では、母乳育児にはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
●ミルクに比べてお金がかからない
●消化がいいので、赤ちゃんに負担がかかりにくい
●子宮の回復が早く、ホルモン分泌が促され気分が落ち着く
●ママのがんの発生リスクが低くなると言われている
●赤ちゃんが病気予防が期待できる
●ママと密着し、関係性が深まる
いいことだらけのようですが、一方で以下のようなデメリットもあります。
・こまめな授乳が必要で負担がある
・乳腺炎などの心配がある
・赤ちゃんが哺乳瓶を使えなくなる
・ママが薬が飲めず、食事にも注意が必要
・子どもを預けにくい
また、母乳がじゅうぶんに出る場合でも、あげてはいけないということもあります。
・ママが飲酒や喫煙をしている
・ママが薬を飲んでいる
・ママの栄養状態がよくない
このような場合は、ミルクにすることが大切です。
ミルク育児のメリットとは
赤ちゃん用のミルクは新生児から離乳期まであげることができます。
ミルク育児のメリットをあげていきましょう。
●ママの負担が少ない
●パパや祖父母でも授乳できる
●栄養価が安定していて、飲んだ量がわかる
●母乳に不足しがちなビタミンKが含まれる
このように見ると、何も悪いところなどないように思えます。
しかし、ミルク育児が否定されがちなのはなぜなのでしょう。
ミルクは母乳に比べると消化にやや時間がかかるため、授乳に間隔があきます。
その分、授乳回数がすくないため、スキンシップがないと言われてしまいます。赤ちゃんを抱っこせずにタオルなどで哺乳瓶を支える人もいますが、そうではなく、抱っこでの授乳を心がけましょう。また、マッサージなどでも愛情は伝わるので、心配はいりません。
免疫が少なく、病気にかかりやすいのではという心配の声も多いようです。
しかし、免疫が含まれているのは「胎盤由来」と「初乳」なのです。
母乳分泌の少ないママが母乳ばかりにこだわってしまうと、赤ちゃんに栄養がいきません。発育曲線にあった発育をしているかのほうが大切です。
これは母乳でもミルクでもあまり関係ないそうです。どちらにしても、ミルクを飲用したときにアレルギー症状が出る場合があります。母乳の場合でも、ママがバランスよい食事をしていないとアレルギーになりやすいです。
なぜ「母乳神話」が生まれたの?
母乳の出が悪かったり、乳腺炎を起こしたり……などでミルク育児になるとプレッシャーやストレスを感じるママも多いでしょう。
特に高齢者は、昔は粉ミルクの質がよくなかったため、母乳ではないとダメという人が多いのかもしれません。
それこそが「母乳神話」なのです。
・WHO(世界保健期間)が母乳を推奨
これは、栄養価が安定しなかったり衛生的な水を手に入れにくい開発途上国向けのもの。
日本はこれにあたらないので、ミルク育児でも問題ないのです。
・ミルク育児だと乳児突然死症候群が増える?
これはミルク自体が影響しているのではなく、赤ちゃんがぐっすり眠る時間が長いため、ママが目を話す時間が増えることが原因と言われています。そばについている、長い間目を離さないなどをすれば、異変に気づくことはできます。
現在では、母乳とミルクで赤ちゃんの成長に差が出るということがないことは数々の研究で明らかです。特に最近の日本のミルクは質が高く安全、栄養価も母乳とほぼ同じものになっています。
ミルクであっても母乳であっても、赤ちゃんの様子に気を配ることが大切なのです。
混合育児もオススメ
近年はワーキングママも増えているので、ミルクを利用する人も増加しているようです。
母乳にもミルクにもメリットがあるということで、両方のいいところどりができる「混合育児」をしてみてはいかがでしょう。
基本的に混合育児とは母乳を与えたあとにミルクを足すものです。
健診の時などに発育に合わせて量についてのアドバイスをもらうといいでしょう。
赤ちゃんにも合っていて、ママの負担にならない方法を見つけられるといいですね。
知っておきたいミルクの種類
粉ミルクというのは、本来、牛乳を原料にして加工され、乳幼児に必要な栄養素を加えて作ったものです。
ミルクというと、育児用が思い浮かびますが、そのほかにもいろいろな種類があります。赤ちゃんの発育に合わせて、医療機関に相談するなどして選ぶとよいでしょう。
アレルギー用調整粉乳
体が発達していない赤ちゃんはアレルギーを発症する子もいます。その場合の、アレルギーをおさえるアミノ酸混合乳です。
大豆たんぱく調整乳
牛乳たんぱく質へのアレルギーがある子に与えられる、大豆からできた大豆たんぱく調整乳です。
低出生体重児用粉乳
低体重で生まれた赤ちゃんのための、栄養価が高く、消化が良いミルク。
無乳糖ミルク
乳糖を分解できない乳糖不耐症の赤ちゃんのためのミルク。下痢症状などをおさえます。
フォローアップミルク
離乳期の赤ちゃんの栄養をフォローするミルク。牛乳に移行する前に使います。
まとめ
母乳の出方には個人差があります。出が悪くても自分を追い込む必要はありません。
「授乳」は赤ちゃんの体と心を育てます。
こだわりすぎず、母乳とミルクのそれぞれの良いところを組み合わせながら取り入れていきましょう。