「はしか」が流行する?
2023年春、都内の30代の女性と40代の男性の2人がはしかに感染していたことが確認されました。
都内ではしかの感染が確認されたのは3年前の2020年以来です。
はしかは発熱や発疹が出るウイルス性の感染症で空気感染で広がり、感染力が極めて強く、合併症として肺炎や脳炎などを引き起こし、重症化すると死亡する可能性もあります。
今回は、「はしか」についての症状や予防法について解説いたします。まずは、はしかについてしっかりと理解しましょう。
はしかはどんな病気?
そもそもはしかとはどのような病気なのでしょうか?一緒に確認していきましょう。
原因は?
はしかの原因は「はしかウイルス」です。はしかの免疫を持っていない人が、はしかウイルスに感染することで起こります。
症状は?
感染から発症までには10日前後の潜伏期間があります。感染後すぐに症状が現れるわけではないので、注意が必要です。
発症後は、①カタル期 ②発疹期 ③回復期 という順に症状が変化していきます。順を追って解説していきましょう。
① カタル期
咳や鼻水、37~38度前後の発熱。目の充血や目やになどの結膜炎症状が現れます。3~4日症状が続いたのち、いったん熱が下がります。
② 発疹期
口の中やほっぺの内側に白いプツプツ(コプリック班)が現れます。コプリック班は、はしか特有の症状のひとつ。診断する上で非常に大切です。
発症後4~5日すると、一度下がった熱が再度上昇。時には40度ほどの高熱が出る場合もあります。
同時に、赤い発疹が首やほっぺに現れます。発疹は次第に全身に広がっていきます。咳や下痢が現れる場合も。
③ 回復期
発疹が全身に広がるにつれ、体温も低下していきます。発疹は赤から赤褐色に変化し、次第に剥けてきれいになります。
治療方法は?
はしかはウイルスによる感染症なので、残念ながら特効薬はありません…。基本的には、症状に合わせた治療が行われます。
しかし発熱の期間が長く、咳などの症状もひどくなる場合が多いです。さらに合併症も起こしやすいため、入院が必要となる場合も少なくありません。
合併症が起こる場合も!
はしかに感染すると体力がガタッと落ちます。同時に免疫力も低下するため、さまざまな合併症が起こりやすくなります。なんと感染者の30%に合併症が起きる! と言われることも。
主な合併症を以下にまとめました。
- 肺炎
- 中耳炎
- 喉頭炎
- 下痢
- 脳炎(非常に珍しい)
- 亜急性硬化性全脳炎(数年後に発症する)
このようにさまざまな合併症が起こる場合があります。子どもがはしかに感染した場合は、できるだけそばを離れず、注意して経過を見守るようにしてください。
少しでも気になる症状が現れた場合は、すぐに主治医の診察を受けるようにしましょう。
はしかと間違えやすい病気
高熱と発疹が特徴的なはしか。しかし、はしか以外にも、高熱と発疹を伴う病気はたくさんあるのです。
では、はしかと間違えやすい病気にはどんなものがあるのでしょうか。よく見られる3つの病気をご紹介します。
風疹
まずは風疹。別名「三日はしか」とも呼ばれるほど、はしかによく似た病気です。
妊婦さんにとっても危険な病気のひとつ。聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
風疹ウイルスに感染後、2~3週間で発症します。小さな赤いポツポツが顔に出はじめ、次第に首や体に広がっていきます。同時に熱が出たり、首の後ろのリンパ節が腫れたりする場合も。
発疹は3日程で消えてなくなりますが、リンパ節の腫れは3週間ほど続くことがあります。
はしかとの見分け方
- 発疹の数が少ない
- 色が薄い
水ぼうそう
子どもに流行しやすい水ぼうそう。感染力が強い病気として有名で、兄弟全員に感染した…なんてこともしばしば。
ウイルスに感染後、2~3週間で発症します。発熱と同時に、頭や顔に小さな赤いポツポツとした発疹が出はじめ、胸やお腹など全身に広がっていきます。
発疹は、赤いポツポツ→透き通った水ぶくれ→かさぶた、と変化していきます。発疹が出た順にこの経過をたどっていくので、全身に赤いポツポツ、水ぶくれ、かさぶた…さまざまな状態の発疹が入り乱れます。強いかゆみを伴うので、グズグズと不機嫌になる場合も。
はしかとの見分け方
- 水ぶくれができる
- かゆみが強い
- 熱の出る期間が短い
手足口病
夏に流行する手足口病。いわゆる夏風邪のひとつで、乳幼児によく見られる病気です。
ウイルスに感染後、3~6日で発症。その名の通り、手のひらや足のうら、口の中に水ぶくれのようなポツポツや、赤いポツポツが出ます。時にはお尻まで広がることも。同時に微熱が出る場合もあります。
1週間ほどで自然に治る、経過の良い病気です。
はしかとの見分け方
- 発疹の出る場所が限定的
- 高熱が出ない
しかし、いずれの病気も素人判断は禁物!気になる症状が現れた時は、すぐに病院を受診するようにしましょう。
はしかの予防方法
はしかは非常に感染力が強い病気です。しかし、予防する手段がひとつだけあります。
それは「予防接種」です。はしかから身を守るために、必ず受けるようにしましょう。
現在使用されているはしかの予防接種は「MRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)」と呼ばれるものです。
接種は計2回、以下に記載したタイミングで行います。
- 1歳前
- 小学校入学前の1年間(5歳以上7歳未満)
合計2回接種することで、しっかりと免疫を獲得することができます。1歳のお誕生日を迎えたら、すぐに1回目のMRワクチンを接種するようにしましょう。
はしかの疑問を解決!
「妊婦がはしかにかかると大変らしい」と聞いたことはありませんか?
何かと気になる素朴な疑問を集めてみました。
①妊娠中にはしかにかかるとどうなるの?
妊婦さんがはしかにかかるとどうなるのでしょう。まず気になるのは、お腹の赤ちゃんへの影響です。
妊娠中にはしかに感染しても、赤ちゃんに先天性の奇形が出る可能性は少ないと言われています。
しかし、流産や早産の可能性は高くなります。なんと、はしかに感染した妊婦さんの30%が流早産してしまったとのデータもあるそう。
また、妊婦さんは免疫力が低下しやすいものです。そのためはしか自体が重症化しやすく、合併症も起こりやすくなります。
お腹の赤ちゃんを守るためにも、やはり予防接種が重要。妊娠を希望している時は、早めのワクチン接種を心がけましょう。(MRワクチン接種後、2か月間は避妊が必要です)
②マスクをすれば大丈夫なの? 何か予防対策はある?
残念ながらマスクでは予防できないそうです。医療用の高性能マスクを使用しても、完全に予防することは不可能だとか…。もはや太刀打ちできません。
やはり予防策は「予防接種」のみです。
③なぜはしかが流行するの?
しばしば流行を繰り返すはしか。
この質問のカギとなるのは、「はしかの感染力の強さ」と「予防接種の回数」です。
感染力が非常に強いはしか。一人に感染すれば、免疫のない人たちにあっという間に広まっていきます。その免疫を付けるために欠かせないものこそ、予防接種です。
はしかのワクチンが導入されたのは、1978年10月。当初は1回のみ接種されていました。
現行の2回接種が開始されたのは、2006年度からです。
予防接種を1回しか行わなかった世代の人々の中には、十分な免疫を持っていない人もいます。そのためはしかに感染しやすく、流行が広がっていると考えられているのです。
実際に患者の多くは20~40代。まさに1回のみ接種だった世代の人たちです。
予防接種の回数を調べたい時は、母子手帳のチェックがおすすめ。接種回数が0回や1回の人は、ぜひ追加で予防接種を行いましょう。
また、母子手帳が手元にない場合は、医療機関で免疫の有無を調べることもできます。気になる場合は、ぜひ早めに受診するようにしましょう。
④はしかにかかったらどうするべき?
はしかかも…と思った時は、まずは仕事や学校を休みます。
病院を受診する際は、事前確認を忘れずに!はしかの可能性を伝えたうえで、病院の指示に従って受診するようにしましょう。
絶対に直接病院を受診してはいけません。万が一本当にはしかだった場合、他の患者さんに感染が広がってしまいます。
実際に院内感染した例も後を絶ちません。病院には予防接種を受けていない赤ちゃんや妊婦さん、免疫力の弱い患者さんもいます。十分に注意しましょう。
⑤どうやって感染するの?
はしかに感染した人のくしゃみや咳を浴びたり、ウイルスが付着した物を触ったりすることで感染します。
はしかは感染力がとても強い病気です。時には、感染した人と長時間同じ部屋にいるだけで感染する場合もあります。恐いですね…。
免疫のない赤ちゃんや子どもが感染した場合、ほぼ100%発症すると言われています。
⑥何回も感染するの?
はしかは風邪やインフルエンザなどとは違い、感染を繰り返すことはありません。はしかに感染すると、体の中に免疫が作られます。この免疫は生涯継続するので、基本的には一度かかれば二度と感染しないと言われています。
ただし、中にはごくまれに再感染する人もいます。
まとめ
しばしば流行が見られるはしか。とても感染力が強く、恐ろしい病気ですが、予防もできます。1歳を過ぎたらすぐに予防接種をしましょう。
また、追加接種も忘れずに。大切な命をしっかり守っていきましょう!